歯周病と献血

        患者さんが、ある日 「先生、私 この次、献血したいと思っているんですが、2~3日

      治療を休んでいいでしょうか?」と言うので、私が 「何故ですか?」 と尋ねると、

      献血センターで 「歯科治療の後、3日ぐらいは献血が出来ない。」 と言われたそうなの

      だ。特に抜歯やスケーリング( 歯石除去 ) は良くないと言われたらしい。

       私は初めて聞く事なので、早速 献血センターに問い合わせてみた。

      すると係員が 「抜歯は必ず出血しますし、スケーリングもガリガリやって血が出易いので

      献血する場合には、良くないんです。」と言うのだ。

       要するに、献血前に出血を伴うような歯科の処置をすると、献血に悪い影響がある

      ということらしい。

       そこで私は、「どういう理由でそう言うのか、確かな根拠を示して欲しい。」と言った。

       スケーリングというのは、ただ歯石を取っているのであって歯肉を傷つける処置では

      ない。出血するのは、歯石の影響で歯周病が進行していて、歯石を少し動かしただけ

      でも血が出る状態になっているからだ。

       この係員、ひいては一般の人においてもー歯石除去は必ず歯肉を傷付けながら行うー

      という誤解がある。

       献血センターの件の係員が、わざわざその根拠たる論文を持って来てくれた。

        わざわざ持って来てくれたのはいいが、英語で書かれた論文だった。

      この係員は 「多分この歯医者、英語の論文なんか読めないだろう!」と思って

      わざと持って来たのかもしれない。恐らくこの係員も読めないことだろう。

        私は、3年ほど歯周病の医局に残っていたので、医局の勉強会で何十もの英語論文

      を 読まされた。論文そのものは、英語で書かれた評論や小説に比べて表現が簡単で

      単語さえ解れば、書いている内容を理解するのは誰でも出来る。

        その内容によればー出血を伴う処置をすれば菌血症( 細菌が血管の中に入り込んで

      しまう状態 )を一次的に起こす事になる。したがって其のまま献血すれば細菌の入った

      血液を採取する事になるので、そういう時に献血をしてはいけないーという事らしい。

        ところが、その論文にはーー抜歯よりも歯磨きに伴う出血の方が、より重症の

        菌血症を起こしてしまうーーと書かれていた。

        という事は、普通に歯磨きをした人は、その日献血を出来ないことになる。

      歯磨きで出血するとすれば、かなり歯周病が進んでいると思って間違いない。

        問題は歯科の処置や歯磨きではなく、献血をする人の歯周病の状態なのだ。

      出来るだけきれいな血を献血するーということを考えれば体内の細菌は少ない方が

       良い。

       歯科の処置に対する誤解は、きちんと解いておくべきだろうし、歯周病そのものに

      対する一般の人達の理解も、我々の手で普及して行かなければーーと改めて考え

      させられた。

       

      


      



      


      

      
[PR]
by tramasato | 2010-08-01 11:57


<<    献血ーその2   異常気象 >>