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歯痛

 昔、歯が痛くなって歯科に行った。ちょうど札幌で浪人していた

  頃の事で、その当時は自分が将来 歯科医になるなんて夢にも

 思っていなかったので、友人の知り合いの歯科医院に行く事にし

  た。--その頃の歯科医院というのは、何処も混んでいて

 待合室の中など、本当に立錐の余地もなかった。

  立ちながら待っているうちに、友人の紹介だというので思った

 よりも早く診てもらえる事になった。

  先生は面白い人ではあったが、今の様な歯科用のタービンが

 無かったので、電気エンジンで回るバーで削られた。

  もちろん、麻酔なしである。

 エンジンの振動は頭にガンガン響くし、削られるととても痛い。

  痛い歯に振動を与えたら益々痛くなって来るだろうに、そんな

 事お構い無し。--そのあと削った穴にアルゼンを入れる。

  いわゆる「神経を殺す」という薬である。

 その頃は神経を取る時に麻酔が使われてはいなかったので、

  そんな幼稚な方法でしか治療出来なかったのだった。

 その日はそれで終わり、2日ほどしてまた治療に行った。

  その2日間はまだ、歯が痛んでいた。

 2日目もまた、エンジンでガンガン削った。痛かった。

  もう一度薬を入れ直して、また来る事になった。

 3日目、少し痛みが和らいだ。またガンガン削って歯の穴

  を大きくした。先生がそこに器具を差し込んだ。

 「痛い!」と思わず私は叫んだ。そうすると先生が

  「君は痛みに弱いなあ!もっと痛みに強くならなきゃいかん

 なあ!」「休みの間にもっと痛みに強くなる様な訓練をしなさい!

  」等と言っている。ーーその当時は「そんなものかなあ?」

 と真面目な私は思っていたが、いま考えると馬鹿げた話である。

  第一、痛みが我慢出来なくて来たんじゃないか!我慢出来るな

 ら来る訳がない。本末転倒である。

  そんな事を先生が言っても、患者が断りきれない程来る時代だ

 ったのである。

  いまだったら、そんな歯科医院に患者が来る訳も無いのだがー

 ー歯科医にとっては良い時代だったんだなあーーと思う。

  
by tramasato | 2011-09-30 21:56


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