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季節感

  ことしは雪解けが遅かったので、最近ようやく葺きのとうが見られ

 る様になった。もうすっかり大きくなって、食べるには時期が過ぎて

  いるのであろうがーー。

 土の上にたくさん出て来ている葺きのとうを見ると、むかし父がよく

  庭に生えて来た物を採って、味噌汁に入れて好んで食べていたの

 を思いだす。私も食べてはみたが、ただ苦くて、「こんなもの、ど

  こが、うまいのか?」と思ったものだった。

 葺きのとうは、雪解け直後にしか食べられないので、そういう季節感

  を、父は大事にしていたのかもしれない。

 子供の頃は、秋にはどの家庭でも軒先に大根を干し、沢庵漬けを作

  り正月前には、菓子屋で餅をたくさん搗いてもらい、片栗粉をふ

 って保存しておく。

  みかんは箱で買って、しまっておく。---というのが当たり前の

 風習だった。みかんは箱の下の方にあるものは、潰れてカビが生え

  たりする。餅も長い間置いておけば、カビが生えるので、カビの部

 分を取って、油で揚げて食べたりした。--その油で揚げた餅を食

  べるのが、楽しみでもあった。

 そんな風習があったのも、餅やミカンは1年のうちのその時期しか

  食べられなかったからだ。その時期にしか食べられないから、

 たくさん買ってしまっておく。駄目になったら、なんとか工夫をして

  食べられるようにしていたのだろう。

 いまは、沢庵でもミカンでも餅でも、1年中食べられる。ミカンはハ

  ウス栽培で、餅や沢庵は保存料で、1年中たべられる様になった。

 いつでも好きな時に、食べられる様になったが、それだけ食べ物の

  有難さが薄れ、季節感が失われて来ている。

 これが良い事なのか、悪い事なのかは判断するのは難しい。

  ただ昔を懐かしんでいるだけなのだろうか?
by tramasato | 2012-04-26 13:52


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