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      父の死 

                12月6日に、父が亡くなった。

           満88歳だった。ーーー長生きと言えるかもしれない。

        透析を始めてから5年にもなっていた。

        今はその5年間が、とても短かったような気がする。

         父との思い出で、とても残念だった事が一つある。

        私が中学生、弟が小学生だった時のこと。

         その時私たち二人は見たい映画があり、上映時間も迫っていたので映画館へと

        急いでいた。その時街中で偶然に父に出会ったのだ。

         私たちを見かけると父は、にこにこしながら 「これから豚カツ食べに行くんだけど

        一緒に行かないか?」と声をかけてきた。当時その近所に豚カツの有名な店があった

        のである。ーーー父は昔から美味い物を食べる事が好きだった。

         ところが私達は映画の方がとても気になっていたので、「僕たち映画に行かなきゃ

        ならないからーー。」と断ってしまった。

          父は 「ああ、そうか。」と言って去って行った。

         いまでも、その時の父の寂しそうな後姿が見えるような気がする。

          映画が終わってから私と弟は反省した。

         「もし今度言われたら、一緒に食べに行こう!」と私が言うと、弟も「うん!」と

        頷いた。

          だが二度とそういう機会は訪れなかった。

         人生とはそういうものである。一度チャンスを逃すと、二度とやって来ない。

        私達にしてみれば、父がそういう風ににこにこしている事がとても珍しかったのだ。

        小さい時は、とても厳しい人のように思っていた。

         葬儀の際に、多くの方から声をかけて頂いた。

        今は、父が残した日記や趣味の写真などを整理したり、葬儀後の後片付けに

        追われている。

         多くの方々のお話を聞いたり、父の日記等を見ていると、私たち家族から見た

        父と周りの人達から見た父には、大きな隔たりがあるような気がする。

         どちらも 長谷川 正 という人間だったーーというのが正解だろうか。

         

        

       
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by tramasato | 2010-12-23 21:05

     レントゲンは体に悪い?

         「先生、レントゲンって体に悪いんですよね?」と患者さんに突然言われた。

      どういう話かというと、その患者さんは定期検診の度にレントゲン撮影するのは、

      体に良くないのではないか?--と不安になっているのである。

        私もあまり撮影する数が多ければ、体にも影響があるのではと思っていたので

      患者さんにそう言われて、改めて調べてみることにした。

        結果、たとえ一日100枚歯科用のフィルムで撮影して、一年間撮り続けたとしても

      それが原因で白血病やガンになったりする事はないという事だった。

         自然界には自然放射線というものがあって、日常生活で私たち人間は食物や

       地面から常に放射線を浴び続けている。

          その量は、日本では年間で 

                    1.4mSv ( mSvは放射線量の単位 ) ぐらいである。  

        それに対して歯科用レントゲンフィルム一回の撮影に使われる放射線量は

                    0.01mSv~0.03mSv程度

        パノラマと言われる大きなフィルムでも

                    0.02mSv~0.03mSv程度

          自然放射線量の50分の1から150分の1ぐらいである。

          たとえ1年に3回定期検診を受けても、50枚以上のレントゲンを撮るなんて事は

         あり得ない。

           殆ど体に影響は無いと言っていいだろう。

          その患者さんは確かな数値を調べたわけではなく、漠然と不安を感じて

         そう言ったのではないだろうか?

           同じ様に考えている人も多いだろう。

          健康思考が流行の世の中といっても、いい加減な知識が横行していて

           自分自身でその知識の根拠を追及している人は少ない。

          他人からの受け売りや、単なる思い込みである場合も多い。

         この患者さんは、要するに 「これ以上、定期検診に来院するのが面倒になった。」

         という事でレントゲンの事を持ち出したのらしい。

          定期検診は、患者本人にやる気が無ければ、続ける意味が無い。

         この患者さんには、少し休んでもらうことにした。

          しかし患者さんの疑問というのは有難いもので、私のいい加減な知識も

         お陰で確認し直す事ができた。

        

        
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by tramasato | 2010-12-16 23:21

     愛される入れ歯

          ある日、当院の80代の女性患者さんから電話があった。

       「先生、入れ歯が合わなくなったので新しく作って欲しいんですけどーー。」

       私は 「はい、判りました。〇〇時にいらして下さい。」と答えた。

        ところが、しばらくしてまた彼女から電話があり 「先生、やっぱり止めます。」と言う

       のである。

        私が 「何故ですか?」と尋ねると 「まだ使えそうだから、もう少し後からにします。」

       と言う。   私は気になったので、もう少し詳しく彼女の話を聞いた。

        その話によると、ラーメンを食べた後、急に気分が悪くなってトイレで吐いたのだ

          そうだ。

       その時、入れ歯も一緒に便器の中に吐き出したらしい。

        その汚物まみれの入れ歯を見て、最初の電話をかけてきたのだ。

       ところが、時間が経つにつれ「勿体ない!」と思ったのだーーと言う。

        それで洗って、また使うことにしたのだそうである。

       その後、第二の電話をかけてきたのだ。

        今はその入れ歯を口の中に入れているらしい。

       私はその話を聞いて、複雑な気持ちであった。

         彼女にとって、今や入れ歯は体の一部に成りきっている。

       今の入れ歯に強い愛着を持っている。

         だから、トイレに落ちて汚物まみれになったにもかかわらず、洗って使っているの

        であろう。

        自分の作った入れ歯が、それ程愛されるのは歯医者冥利に尽きる事ではあるがーー。

       最近また別の女性の患者さんが 「入れ歯を無くした。」という事で来院した。

        何処で無くしたのか尋ねると その患者さんは 宴会の2次会に行って酒を飲んで

       いるうちに気分が悪くなり、トイレで吐いたのだそうだ。

         彼女も同様に、入れ歯を便器の中に吐き出したらしい。

        その入れ歯は私が作って、15年間も使ってもらっていた物なのだが、

        さすがにその患者さんは、トイレに落ちた入れ歯を其のまま洗ってまた使う気には

       ならなかったらしい。

         潔く諦めて、新しい入れ歯を作りに来院してくれたのだ。

          まあ常識的な判断だと思うがーー。

        それにしても第一の患者さんは、トイレに落とした物まで使う。

         第二の患者さんは、15年間も同じ入れ歯を使う。---という程、愛着を持って

        もらうのは結構なのだが、入れ歯というのは作って6ヶ月もしたら合わなくなるん

         ですよ!

          少しでも合わなくなったら、すぐに作り直してください!

          もし吐きたくなったら、入れ歯を外してから吐いてください!

          まあ、これは無理な話かもしれないがーー。

           とにかく、患者さんは長年使った入れ歯に愛着を持つものらしい。
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by tramasato | 2010-12-01 23:02